1年に1度あるいは数年に1度の健康診断を受けると、稀に思いもよらなかった結果や指摘をされることがあります。
とはいえ普段、検査項目にある数値等は気にせず生活している方が大半で、急に「〇〇の数値が悪い」と言われてもまずはその数値が何を表しているのかという基本から知る必要があります。
数ある検査項目の中でも今回はクレアチニンの数値が高い・低い場合の対処法についてみてみましょう。そしてそもそも「クレアチニン」とは何なのでしょうか?
この記事のもくじ
クレアチニンの値を上げる・下げるためにできること
健康診断等でクレアチニンの値が高値・低値だった場合、「どうすれば良いの…?」と焦ってしまいますよね。
もちろん、異常値である場合には専門医を受診し再検査をすることではっきりとした原因を突き止めることが必要となります。
ただ、そこまで深刻でない場合は日頃の積み重ねや意識で値を正常値に戻すこともできます。
では、クレアチニンの値を上げる・下げるためにできることはなんでしょうか?
クレアチニンの値を上げるためにできること
クレアチニンの場合、高値の場合には腎機能に問題があると判断され、腎機能向上のための工夫や取り組みが必要となりますが、低値の場合に考えられる病気の一つが筋ジストロフィーです。
ただ、クレアチニンの値が低値だったとしても、必ずしも筋ジストロフィーと関係性があるとは限りません。
特に女性の場合、筋肉量が男性よりも少ない分低値になりやすい傾向にあります。正常範囲ギリギリあるいは少し下回っていてもそれほど悲観する必要もありません。
もちろん筋ジストロフィーの場合には、別途検査などから確認する必要がありますが、単にクレアチニンの値が低値である場合にまずすべきことは「筋肉量を増やすこと」です。
他に問題がないのであれば、筋トレ等で筋肉量をつければ自然とクレアチニンの値もあがってきます。
また、筋肉量に関していえば、大きな手術後など筋肉を動かさない期間がしばらく続いた後もクレアチニンの値は下がります。これも単純に筋肉を通常通り動かす生活に戻れば、自然と値も上がります。
意識的に運動を取り入れるなどして筋肉量を増やすことで解決できます。
クレアチニンの値を下げるためにできること
クレアチニンの値が高値の場合、腎機能に何らかの問題がある危険性が考えられることからも早急に対策を取る必要があります。
ここでは、下げるために意識すべきことをご紹介します。
日常生活に取り入れられるものなので、値が正常値の方も健康促進のために始めてみるのも一つの手ではないでしょうか。
食生活
クレアチニンを下げるためにまずすべきこと、それは食生活の見直しです。
具体的には塩分・タンパク質の制限です。塩分を摂りすぎると腎機能に負担がかかり、高血圧やむくみ、だるさなどが起こる原因となります。
また、タンパク質を過剰に摂取するとクレアチニンをはじめとする毒素が体内に溜まるため腎臓に大きな負担がかかります。どちらも「摂りすぎ」が余計な負担を腎臓に与えてしまうので要注意です。
体型や体質、数値などにもよりますが、塩分の目安は1日6g未満。しかし外食やコンビニ食には私たちが思っている以上の塩分が使われています。
そのため、自炊を基本とすることはもちろん、調理する際に使う調味料や食品に含まれている塩分を知る必要があります。
多少面倒でも、調味料を使う際にはしっかり計量することや塩分量の多い干物や練り物、ウインナー、ベーコンなどの加工食品はなるべく避けましょう。
次にタンパク質ですが、タンパク質は肉や魚、卵、大豆製品、乳製品など多くの食材に含まれています。実は、炭水化物であるお米やおやつのケーキなどにも含まれているので、意識していないところでも摂取していることになります。
1日の摂取量を制限することはもちろんですが、あまりにも制限しすぎると、エネルギー量も比例して減ってしまいます。すると、体内に蓄積されている必要なタンパク質を消費して補うことになるため、結果として腎臓に負担がかかります。
必要なエネルギー源を摂取量するために以下のことを意識しましょう。
- 1日3回食事をきちんと摂る
- 1日1回は油を用いた食事を摂る
- 粉飴を利用する
- でんぷん食材(春雨等)を利用する
1日や2日、食生活を気にしたのでは意味がありません。継続させるためにも無理をしすぎない方法を選びましょう。
適度な運動
健康促進のために運動を取り入れるというのはよく聞く話ですが、クレアチニンの場合、あまりに激しい無酸素運動をすると筋肉の活動によってクレアチニンを減少させるどころかかえって増える原因になってしまうことも…。
クレアチニンの値を下げるためには有酸素運動がおすすめです。軽いウォーキングやラジオ体操、通勤・通学時に一駅前から歩く…など、適度な有酸素運動を取り入れることで、内臓の動きや血液の循環を向上させ、結果としてクレアチニンの値を下げることに繋がります。
また、ふくらはぎを足首から膝に向かって揉む「ふくらはぎマッサージ」も効果的。
実際ふくらはぎマッサージを行った方の7割が腎機能改善・維持していると言われていることからその効果は証明済!是非お試しください。
腎臓の仕組みを知る
クレアチニンについてご紹介しましたが、そもそもクレアチニンが作られる腎臓の働きについてご存知でしょうか?
腎臓の働きとして最もよく知られているのが「尿を作ること」です。
より詳しく言うと、体内の老廃物を除去して尿を作ること。老廃物と一言で言っても体内の老廃物は一種類ではなく、何種類もあります。今回の主題であるクレアチニンもまた、老廃物の一種です。
体内に老廃物が蓄積すると、有害物質となり、体の不調や病気の原因になります。尿から老廃物を排出できなくなると、早くて数日~数か月のうちに命を落とすとも言われています。
いかに腎臓の働きが重要かどうかが分かります。
腎臓は体内にある老廃物や有害な物質を糸球体と呼ばれる部分でろ過します。その後、細尿管でろ過液の99%を再吸収し、残りを尿として体外に放出します。
その他の腎臓機能
腎臓の機能は尿をつくることに留まりません。
それ以外を見ると、
- 体内のナトリウムやカリウムなどのミネラル、化合物の割合を一定に保つ
- 余計な水分を尿として排出し、体内の水分バランスを保つ
- 体内の塩分を調整する
- 赤血球の製造、骨の維持
いかに腎臓の機能が重要であり、機能の低下や失われることによる損害が大きいかが分かります。
増える腎臓病患者
生まれつき腎臓にトラブルを抱えている、腎臓が傷ついたり、働きが低下する「慢性腎臓病」を患う腎臓病患者は年々増加傾向にあり、現在の患者数は約1,300万人。
人工透析患者も32万人を超えています。
これは、40年前と比較すると約25倍にものぼる数値です。
症状が出てからでは遅い腎機能低下
腎機能が低下すると、まず起こりうるのが食欲不振や吐き気、だるさ、頭痛です。これは、本来であれば排出されるべき老廃物が体内に蓄積することで起こります。
初期の場合、体調不良の一環と呼ばれるものなので見逃してしまいがちですが、いかにここで検査・診察を受けて食い止めるかが重要となります。
なぜなら、初期といえども腎機能低下で自覚症状が現れるのは既に異常が深刻化しているからです。
症状を危険視せずそのまま放っておくと、電解質のバランスが崩れて体内にナトリウム量が過剰となり、むくみが生じたり血圧が上がります。また、同時にカリウム濃度が上昇すれば、脱力・不整脈に繋がることも。
さらには赤血球が十分に作れないことで貧血、ビタミンDが活性化されず骨がもろく…など、体中に不具合が生じるようになります。
症状を放置することで、最終的には末期腎不全となり治療の方法はありません。
生命を維持するために腎移植あるいは人口血液透析を受けなければならなくなります。
クレアチニンとは?高い・低いとどうなるの?
クレアチニンという名前自体に聞き馴染みがある方は少なく、実際検査に異常があったとしても「何のこと…?」と疑問に感じる方が大半ではないでしょうか。
では腎臓に続いて、クレアチニンについてご紹介しましょう。
クレアチニンを知る
クレアチニン(Cr)とは、クレアチンリン酸という筋肉が運動するために必要となる重要なエネルギー源が代謝された後に残る老廃物のことを指します。
クレアチニンの数値から分かるのは、腎臓の機能です。つまり、クレアチニンの値に異常がある場合、何らかの原因によって腎臓機能の低下やトラブル等が起こっていると判断されます。
クレアチニンの基準値と異常値
クレアチニンの数値は、
㎎/dl(ミリグラム・パー・デシリットル)という単位で表されます。
人間ドック学会によるとクレアチニンの基準値は以下になっています。
単位(mg/DL)
性別 | 基準値 | 注意 | 要注意 |
---|---|---|---|
男性 | 1.00以下 | 1.01~1.30未満 | 1.30以上 |
女性 | 0.70以下 | 0.71~1.00未満 | 1.00以上 |
ただ、各検査機関によって多少の誤差があるので、この基準値や異常値が絶対であるわけではありません。何か指摘された場合には確認するようにしましょう。
クレアチニンが高いことで分かること
クレアチニンの数値が高値を示している場合、考えられるのは腎機能の異常です。
考えられる主な疾病をみてみましょう。
急性腎炎・慢性腎炎
クレアチニンの数値が高値だった場合、最も可能性として高いのが急性腎炎・慢性腎炎です。
急性腎炎は、扁桃腺炎などが起こった後に発症することが多く、早めに治療を受ければ完治することができます。
それに対して慢性腎炎は血尿やむくみ、高血圧などが継続して起こるため完治が難しい病気の一つです。
慢性腎不全
腎不全は自覚症状が現われにくいことから発見したときにはすでに悪化していることが多いことからも怖い病気と言われています。
先にも挙げたように、だるさや高血圧、頻尿から始まり、さらに悪化するとむくみや吐き気、食欲不振を引き起こします。
肝硬変
腎臓ではありませんが、肝硬変を患っている場合、クレアチニンの数値も高値になります。
これは、肝硬変により腎臓に送られる血液量が不足することで腎臓病疾患の原因となるためです。
心不全
心臓は全身に血液を送るポンプの役割を担っています。
そのため心不全により血流が悪化すると、腎臓にも十分な血液を配給することができず、腎機能が低下してクレアチニンの数値が高値になります。
クレアチニンが低いことで分かること
検査項目によっては、数値が高いことは問題であっても低い場合には特に支障ないとされるものも多くあります。
しかしクレアチニンは低い場合も要注意。何かしらの疾病が隠れている危険があります。
では、クレアチニンの数値が低値である場合に考えられる疾病や状態とは?
筋ジストロフィー
徐々に全身の筋肉が萎縮すること筋ジストロフィーとも深い関係があります。そもそもクレアチニンの血中濃度は筋肉量と比例しています。
つまり、筋ジストロフィーになり、体内における筋肉量が低下すると、筋肉から排出されるクレアチニンも減少します。
尿崩症
尿崩症とは、体内の水分調整をうまく行うことができないことから、水分を過剰に尿として放出してしまう病気をさします。
通常、腎臓により体内の水分バランスが保たれていますが、このバランス機能が崩れたことで起こります。
その結果、水分を摂取しても体が排出してしまうので常に喉が渇いた状態になります。喉が渇くから余計に水分を摂取し、尿が出る…という悪循環となります。
糖尿病
高血圧の影響によってもクレアチニン数値が低下します。クレアチニン濃度が低いままで放置すると、糖尿病を発症します。
しかし糖尿病になると、クレアチニンの数値は高値となり、さらに腎不全や糖尿病腎症を引き起こします。
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いかがでしたでしょうか。
クレアチニンの値は、高値・低値どちらも危険信号であり、体に何らかの不調やトラブルが起こっているサインです。
検査結果が芳しくないから。という理由から意識し始めることはもちろん重要ですが、仮に数値が元に戻ったからといって、正常値にする努力や工夫をやめてしまったのでは意味がありません。
大切なことは、その努力や工夫を継続すること。数値だけに一喜一憂するのではなく、自分の健康は自分で守るという意識の元根気強く続けていきましょう!