腎臓系 血液検査

eGFRが低いのは危険!腎不全になる前に数値を上げる対策が必須

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eGFR値

健康診断のたくさんの検査項目の中には、聞き馴染みのないものもたくさんあります。

数値が悪いと指摘されると途端に不安になるものですが、実際どこに異常があるのか、どの臓器や機能に関わるものなのかイマイチ分からない…なんて方もいらっしゃるはず。

今回はその中でもeGFRの数値が良くない、気になる方必見!eGFRを上げたいあなたが今できることについてご紹介します。

eGFRを上げたいあなたが見直すべき生活習慣

eGFRが基準値を下回っており、腎機能低下が進んでいる場合には専門医を受診の上、治療・投薬等をする必要がありますが、軽度の場合、あるいは正常値でも腎機能低下を防ぐ目的でまずすべきことは生活習慣の見直しです。

私たちの体は、食べるもの、習慣等によって成り立っています。つまり、自覚がなくても知らず知らずのうちに生活習慣が体の機能低下の原因となっていることも十分考えられます。

間違いなく自分の体を守るのは自分だけであり、まずは自分でできることや工夫から始める必要があります。

食生活の見直しは重要

私たちは、食事から栄養を補うことで健康を保っています。だからこそ、何を食べるかが重要となります。

特に塩分の摂取量には注意が必要です。塩分に含まれるナトリウムは、健康を維持するために欠かすことができません。

しかし塩分の過剰摂取は、腎臓に負担がかかります。というのも、摂取されたナトリウムを体外に排出するのは腎臓の役割であり、過剰摂取するとその分腎臓が稼働しなければならず、その状態が続くと腎機能低下につながるからです。

そのため、1日あたりの塩分摂取の目安は6gです。

また、タンパク質の摂取についても注意が必要です。タンパク質を多く採りすぎると、腎臓からしか排出されない尿素や毒素、窒素などが体内に蓄積されて腎臓のみならず体に大きな負担をかけることになります。

しかし、塩分・タンパク質共に外食やコンビニ食など手軽な食事にはつきもの。気づかないうちに過剰摂取してしまうという怖さがあります。
出来るだけ自炊を心がけること、面倒でも計量して節制することで腎臓への負担を最小限に抑える必要があります。

食生活においては何を食べるかと同様、どのように摂るかも重要です。例えば、食事の時間がバラバラ、夜間に食べ過ぎる傾向にある方などは体に負担をかけてしまっている可能性があることから注意が必要です。

ただ単に食事を制限すればよいというわけではなく、適切な量、エネルギーを適切な食事療法で実践することを意識していきましょう。

適度な運動

忙しい毎日を送る中で、体を動かす機会が減少傾向にある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
腎機能を改善するには適度な運動が必要不可欠。運動によって血流が良くなることで、腎臓の働き自体の改善も期待することができます。

実はひと昔前は、「腎臓病患者や腎機能が低下している場合には運動は控えるべき」と言われてきました。

ところが、最近の研究で、適度な運動は腎機能改善効果があると分かっています。とはいえ、激しい運動をすると腎臓に負担をかけるので逆効果になりかねません。特に既にCKDの治療を受けている、あるいはeGFR数値が低い場合などは運動の程度についても専門指示のもと行う必要があります

適度な運動の目安としては、ウォーキングや水中歩行などの有酸素運動を1日20~60分行うと良いでしょう。
運動の時間が取れない場合には、日々の生活で少し意識するだけでも十分効果的です。

通学・通勤時に一駅前から歩いたり、エスカレーターやエレベーターでなく階段を使ったり、家事をしながら昇降運動をする…など、意識次第で適切な運動になります。

体を冷やさない

体が冷えていると、さまざまな疾病にかかりやすくなります。

血管は体の熱を逃がさないために寒さを感じたらすぐに委縮します。血管が収縮すると、血流が悪くなり腎臓の血液ろ過にも影響を及ぼしてしまいます。

体を冷やすことは、腎臓のみならず心脳血管障害を発症させるリスクも高まります。
特に夏場はオフィスや飲食店、交通機関などのエアコンがききすぎて体を冷やしてしまいがちです。

温かい飲み物を飲む、羽織りものやブランケットを用意するなど日頃から体を冷やさないよう心掛けることが必要となります。

夜間、コップ1杯の水を飲む

腎機能が低下すると、初期症状として夜間の頻尿が起こりやすくなります。

すると、夜中に目を覚ましたくないという思いから夕食中や睡眠前の水分補給を控えてしまいがちですが、これは脱水症状に伴う腎機能の低下に繋がります。

水分補給は腎機能低下を防ぐためには重要です。そのため、眠る前や夜間に目が覚めてしまったときなどコップ1杯の水を飲んで脱水症状を防ぎましょう。

NG生活習慣を知る

あなたにとって日常とも言える生活習慣が、実は腎臓に負担がかかっているのだとしたら…どうすれば良いのでしょうか?

今私たちの生活はとても便利です。望むものはたいてい手に入る生活、だからこそそれに甘んじてこんなNG生活習慣を当たり前にしていませんか?

ではNG生活習慣を見てみましょう。

喫煙

「タバコは百害あって一利なし」こんな言葉を聞いたことはありませんか?

タバコと関係があるのは肺じゃないの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、タバコは体の全ての臓器にとって有害であり、腎臓も例外ではありません。

タバコを吸うことで、血圧が上昇します。そしてこの上昇した血圧を腎臓が元に戻そうとする働きがあり、タバコを吸うたびに腎臓にとって負担がかかり、さらには腎臓内の血管にもダメージを与えることになります。

実際、タバコを1日20本以上吸う喫煙者は、吸わない人と比べて末期腎不全になるリスクが2倍以上であることも明らかになっています。

肥満回避

eGFRの数値が低値である方、あるいは腎機能に不安を感じる方がまず意識すべきことは肥満回避です。肥満であることは腎臓をはじめとする臓器に大きな負担を与える危険性があります。

「リンゴ型肥満」と呼ばれる肥満体型をご存知でしょうか?おなかの周りに脂肪がたまってリンゴのようなシルエットになることを指しているのですが、このリンゴ型肥満の方は腎臓病リスク高いと言われています。

これは、内臓脂肪が蓄積されることで体内の余分な塩分や水分を外に排出することができなくなり、その結果血圧が上がり腎臓の負担が増える…というもの。

厄介なことに、さらに年齢が進むと、内臓脂肪を減らしづらくなります。運動をしてもなかなか体重が減らないのと同様ですね。早いうちから肥満対策を採ることが求められます。

参考
BMI
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過度な飲酒

酒はタバコとは異なり、適量であれば体にとって必ずしも有害ではありません。ただ、過度な飲酒はCKDのリスクになります。

腎臓病の治療を受けている方、あるいは数値が気になる方が飲酒する際、目安としては1日20g以内です。

具体的にはアルコール度数5度のビールで500ml中瓶1本、アルコール度数15度の日本酒であれば1合です。

また、選ぶ酒類も重要です。というのも、ビールにはタンパク質、ワインにはカリウムやリンが含まれていて、これらはCKDあるいは腎機能に問題がある人が摂取を控える必要がある成分です。

そのため、腎機能低下により成分摂取制限がある方、あるいは要注意と医師から指摘されている方は飲酒の際には量だけでなく何を飲むかについても考える必要があります。

ストレスとの付き合い方

ストレス社会に生きる私たちにとって、ストレスは切っても切れない関係にあります。

仕事や人間関係等さまざまな場面でストレスを感じることがあるでしょう。
しかしストレスは、腎臓への血流を低下させることから、腎機能低下の原因にもなり得ます。

ストレスを全く感じない生活を送るのは残念ながら不可能に近いものがあります。そのため、いかにストレスを溜めないか、ストレスを自分で発散する方法を身に着ける必要があります。

不規則な生活

夜寝る時間がいつも遅い、食事を摂る時間がバラバラ、眠る間際までスマートフォンを目にしている…。
こういった不規則な生活は、体にとって負担となります。

特に睡眠は重要で、たとえ睡眠時間自体は確保できていたとしても、しっかりと脳と体が休まっていなければ何の意味もありません。
一般的に睡眠のゴールデンタイムと言われる夜10時~夜中2時までを睡眠時間としてしっかり確保することはもちろん、睡眠前の行動も重要です。

眠る2時間前までに飲食を済ませておくこと、眠る間際の入浴を控えること、出来るだけ光のない場所で眠ること…など、眠る前後の行動も質の良い睡眠に大きく関係します。

まずは1日のリズムを整えることから始めてみてはいかがでしょうか。

eGFRって何のこと?

eGFRとは、腎機能つまり腎臓の機能の程度を図る数値です。

より具体的に言うと、腎臓にどのくらい体内の老廃物を尿として排出する能力があるかを図るもので、この数値が低ければ低いほど腎臓の働きが悪いということになります。

eGFR から分かること

eGFRの値を調べることで、腎機能の状態が分かりますが、腎機能の低下が慢性的に続くと、慢性腎臓病(CKD)であると判断されます。

現在CKDの患者数は国内に1,330万人。これは成人の8人に1人がCKD患者であることを示しています。

重症化が進むことで行わなければいけない人工透析を受けている患者数は35万人を超え、これは40年前と比較すると実に25倍にも上る数であり、今やCKDは新たな国民病として恐れられています。

CKDの診断基準は

  • 腎障害がある。
  • 腎機能が低下している。

この2点です。この2の腎機能低下にeGFRが用いられます。

CKDの重症度は、eGFRと原因となる疾患、蛋白尿の有無から総合的に判断されます。

CKD の原因となる疾患

CKDの原因となる疾患には以下があります。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 加齢

これらに加えて、肥満や運動不足、飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣も大きく関係があることから、誰しもが例外ではない怖さがあると言えます。

早期発見の重要性

厄介なことに、CKDは自覚症状が表れにくい疾病です。

初期の段階で自覚できる症状はほとんどなく、進行が進むにつれ頻尿や貧血、だるさ、むくみなどの症状が表れます。
ただ、こういった自覚症状が現れたときには既に重篤化が進んでいることから、いかに早く発見するかが重要な鍵となります。

また、CKDは心筋梗塞やの脳卒中など命に係わる大きな病気を招く危険因子であることも分かっています。
小さな異変にも気づくこと、そして一早い対策が求められます。

eGFRの算出法

eGFR=推算糸球体ろ過量のことで、腎臓の中で糸球体が1分間にろ過している血液がどれくらいかを「年齢」・「性別」・「クレアチニン値」から計算します。

参考
クレアチニン値
クレアチニンの数値が高い・低い場合の原因と改善方法について

1年に1度あるいは数年に1度の健康診断を受けると、稀に思いもよらなかった結果や指摘をされることがあります。 とはいえ普段、検査項目にある数値等は気にせず生活している方が大半で、急に「〇〇の数値が悪い」 ...

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健康診断では腎機能検査の一環としてクレアチニン値を測定するので、eGFRの算出は計算式を用いて可能です。(ただし18歳以上を対象とする)

  • 男性:eGFR (ml/分/1.73 ㎡) = 194×Cr-1.094×年齢-0.287
  • 女性:eGFR (ml/分/1.73 ㎡) = 194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.739

ただ、ここで用いられる体表面積(1.73 ㎡)は、標準的な日本人の体型を元にされています。

そのため、極端にやせ型の人や極端な肥満、あるいは筋肉量が極端に多いいわゆる標準ではない人の場合、GFRをその人個人の体表面積を用いて修正しなければ正しい値を算出することができません。

この場合、計算式はeGFR×体表面積÷1,73になります。
ちなみに、体表面積の計算式は、(体重kg)0.425×(身長cm)0.725×7184×10-6です。

性別による違い

上記でご紹介したeGFRの計算式には、血液中のクレアチニンが用いられます。

クレアチニンはそもそも、筋肉量に比例した値となります。そのため、必然的に筋肉量が多いと値が高値となりやすくなり、反対に筋肉量が少ないと低値になりやすくなります。

つまり、男性と女性とでは男性の方が高値に、大人と子どもとでは大人の方が高値になります。

eGFR の基準値・異常値を知る

値だけを見ても、どの程度が基準で、どれが異常なのか分かりませんよね。基準値
もちろん、検査機関によって多少の誤差はありますが、ここで一つの目安としてeGFRの基準値を見てみましょう。

単位(ml/min/1.73m2)

ステージ eGFR 重症度
G1 90以上 正常または高値
G2 60〜90未満 正常または軽度低下
G3a 45〜60未満 軽度〜中等度低下
G3b 30〜45未満 中等度〜高度低下
G4 15〜30未満 高度低下
G5 15未満  末期腎不全

まとめ eGFR を上げる!腎機能を低下させない生活習慣

腎臓は自覚症状が出づらい臓器と言われており、症状が出た時点で既に機能低下、状態悪化が進んでいることから恐れられています。

実際、末期腎不全となった場合、完治する術はありません。だからこそ、小さな不調や変化にいちはやく気づき、悪化を食い止めることが必要となります。

そしてそれは医学の力ではなく自身の管理と、工夫によるもの。
健康診断でeGFRの値が気になる、あるいは腎臓への負担を軽減したい、そう思うのであれば、今すぐに生活習慣の見直し、改善から始めましょう!

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管理人のイガラシと申します。薬剤師の資格を持ち、総合病院や調剤薬局に勤めていた経験もある健康のプロです。そんな私がこのサイトを立ち上げたのは、健康診断の大切さや必要性をみなさんに知って欲しいからです。「元気の手引き」では、健康診断の結果で身体のどこが悪いのか、数値が悪かった時はどうすれば良いのかなど分かりやすく解説しているので是非、お役立てください。

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