健康診断を受けると、さまざまな検査項目から異常値が発見されることがあります。
異常値を指摘されると、「病気なのでは…?」と不安になるのも無理はありません。だからといって不安になっているだけでは何も解決できませんよね。
必要なことは、検査を受けることで体のどこに異常が起こっているか明らかにして必要な治療、あるいは生活習慣で正常値に戻すことです。
今回はHDLコレステロールの値が気になる方必見!HDLコレステロール値を正常値戻す方法をご紹介します。「そもそもHDLコレステロールって何?」なんて疑問をお持ちの方もご覧ください。
この記事のもくじ
HDLコレステロールを正常値にするためにすべき習慣
私たちの体は大きく分けると「食べる」・「寝る」・「動く」で成り立っています。これはつまり生活習慣のことを指します。
健康診断を受けることで異常が発見された場合はもちろん、体に何か異変を感じたときにまずすべきことは生活習慣の見直し、そして改善です。
HDLコレステロールが高い場合、HDLコレステロール値が高いことについては特に問題なく、問題となるのは「肝機能の低下」あるいは「CETP欠損症」が疑われる場合であり、それらに当てはまらない場合であればHDLコレステロール値が高いことで体に症状を伴うことがありません。
つまり、ここで問題となるのはHDLコレステロール値が低い場合です。
ではHDLコレステロール値が低い場合にすべきこと、またNG習慣についてみてみましょう。
食生活の改善は重要
HDLコレステロール値が低い場合、まずすべきなのが食生活の見直し、そして改善です。
私たちは普段、食事から栄養素を摂取することで健康を保っているのですから何を食べるかは非常に重要です。
HDLコレステロール値を上げるための食事療法として以下のアプローチ法が用いられます。
- コレステロールを摂りすぎない
- 中性脂肪を減らす
- 食事の方法を見直す
- サプリメントの活用
- 善玉コレステロールを増やす食品を意識的に摂る
中でも、まずすべきことは「コレステロール摂取量を控える」こと。
というのも、私たちの食生活は欧米化が進んでいます。そしてこの食の欧米化が腎臓疾患患者、生活習慣病患者の増加の原因となっていると言っても過言ではありません。
コレステロール値に異常がある、あるいは腎機能に何らかの不安がある場合コレステロール摂取量は1日600㎎を目安として節制する必要があります。
コレステロールを多く含む食べ物の代表には卵があります。また、肉の内臓系や魚卵などもコレステロールを多く含みます。
また、調味料であるマヨネーズには卵が用いられているので食品に限らず使用する調味料にも注意が必要です。
飲酒はほどほどに
過度な飲酒はコレステロール値を上昇させ、中性脂肪増加に繋がりますが、適量であればHDLコレステロールを増やすことが分かっています。
ただし「適量」であることが重要で、ここで言う適量とは以下の通りです。
- ビール…大瓶1本
- ワイン…グラス2杯
- 日本酒…1~2合
- 焼酎…水割りコップ1杯(200ml)
飲み方の注意点としては、週に最低2日程度休肝日を設けること。いくら適量であればHDLコレステロールを増やすとはいえ飲酒によって腎臓に負担をかけたのでは意味がありません。
質の良い睡眠
質の良い睡眠は健康にとって必要不可欠です。
単に睡眠時間を確保すれば良いのではなく質にこだわることも重要です。
忙しい毎日を送る中で、夜更かしをしていませんか?また、平日の睡眠時間は少なく休日に寝貯めをする。心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
重要なのは、毎日決まった時間に就寝し、決まった時間に起床するというサイクルを身に着けること。このサイクルが乱れると脳がストレスを感じてしまいます。
また、就寝間際までの飲食やテレビやスマホを見るなどの行為も睡眠の質を低下させる原因となるのでNG。
なるべく明かりを消し、温度や湿度管理をしてリラックスできる環境を作りましょう。
適度な運動
適度な運動は、HDLコレステロールを増やす効果を期待できます。ここで言う適度な運動の例として良いものがウォーキングや水中歩行などの有酸素運動です。
実際、1日の歩数が2,000歩未満の人と比べて10,000歩以上歩く人はHDLコレステロールが10%も多いことが研究で明らかになっています。
肥満予防にもなるので一石二鳥ではないでしょうか。
NG習慣を見直す
続いて、HDLコレステロールが低い方が注意すべきNG習慣についてみてみましょう。
習慣をいきなりやめることは困難です。減らす・改善するなど意識しましょう。
喫煙
タバコは百害あって一利なしと昔からよく言われていますが、この言葉に間違いはありません。
タバコを吸うことによって、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血管の壁に溜まりやすくなり、それによって本来であれば余分なLDLコレステロールを排出させるはずのHDLコレステロール量が減少します。
そうなると動脈硬化を引き起こし、腎機能低下に限らず脳卒中や心筋梗塞の直接的な原因となりかねません。
高血圧の人がタバコを吸った場合の脳卒中リスクは吸わない人と比較すると約4倍にものぼることが分かっています。
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肥満
肥満とはすなわち脂肪が体内に蓄積された状態です。中性脂肪には皮下脂肪・内臓脂肪・血中脂肪などがありますが、食べ過ぎによって消費することができず蓄積された中性脂肪はその後どんどん体内に溜まっていきます。
そのため、肥満が加速するとHDLコレステロールを減らす原因となります。
中性脂肪を減らすためには、高カロリー食品を控えることはもちろん、糖分や飽和脂肪酸を多く含む食材についても可能な限り避けた方が良いと言えます。
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加えて青魚等に多く含まれるDHA・EPAを摂ることで体内のLDLコレステロールを減らすことができます。
ストレス
慢性的にストレスを感じることで、血圧や血糖値が上昇します。
すると、ストレスに対応するために体が副腎質ホルモンを必要とし、副腎質ホルモンの材料であるLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールの減少に繋がります。
過度なストレスは体だけでなく心にとっても有害です。しかし、ストレスを全く感じないことは困難です。日々の積み重ねで知らず知らずのうちにストレスが蓄積している場合も考えられます。
ストレスとどう付き合うか、ストレスを溜め込まないための解消法を身に着けておく必要があります。
HDLコレステロールを下げるために知っておくべきこと
HDLコレステロールとは何かご存知でしょうか?
コレステロールと聞くと、何となく肥満や不摂生などをイメージしがちで、あまり良い印象がないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、そもそもHDLコレステロールとは何か、HDLコレステロールについて見てみましょう。
コレステロール
コレステロールとは、人間の体内に存在している脂肪分の一種です。脂肪と聞くと有害なように感じますが、私たちの体にとってなくてはならない存在です。
コレステロールの働きは多岐にわたります。全身を作っている細胞の膜や性ホルモン、副腎質ホルモン、胆汁酸等を作る材料となります。
さらに、ビタミン類を代謝する働きもあることから私たちが思っている以上に重要な役割を担っていることが分かります。
コレステロールの種類って?
コレステロールの中には、「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」があります。
これらはそれぞれ違う働きを担っています。
今回の主題であるHDLコレステロールは「善玉コレステロール」、そしてもう一つがLDLコレステロールである「悪玉コレステロール」です。
具体的な役割としては、LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを全身に運び出す役割であるのに対して、HDLコレステロールは余ったコレステロールを回収する役割となります。言ってみれば、血管内の「お掃除役」なのです。
それぞれに役割があるのになぜ「善玉」・「悪玉」と呼ばれるのかというと、LDLコレステロールは必要な物質でありながら体内で増えすぎると動脈硬化を引き起こす原因となるからです。反対に少なすぎると脳出血の原因となり非常に厄介です。
もちろん、LDLコレステロール自体が悪い影響を及ぼすのではなく、あくまで原因を作り出すことから悪玉コレステロールと呼ばれているのです。
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HDLコレステロールの基準値を知る
自分の数値を見る上で、基準値を知る必要があります。
単位(mg/DL)
要注意 | 注意 | 基準値 | 要注意 |
---|---|---|---|
29以下 | 30〜39以下 | 40〜119以下 | 120以上 |
HDLコレステロールの数値は、女性の方が高くなりやすい傾向があり、女性ホルモン分泌量に関係しています。女性ホルモンは、HDLコレステロールを上昇させる効果があります。男性よりも女性の方が、女性ホルモン分泌量が多いことから基準値にも違いが出ているのです。
HDLコレステロールが高い場合に考えられること
HDLコレステロールは「善玉コレステロール」であることから、高ければ高い方が良いと思いがちですが、実は違って、コレステロールはHDLコレステロールとLDLコレステロールのバランスが重要なのです。
つまり、HDLコレステロールが高いことで引き起こされる健康への問題もあります。
HDLコレステロールが高い場合の原因とHDLコレステロールが高いことで考えられることについてみてみましょう。
高HDLコレステロール血症とは
HDLコレステロールが高い状態を高HDLコレステロール血症と言います。
数値で見ると、120㎎/dL以上です。
ただ、仮にHDLコレステロール値が高く、高HDLコレステロール血症と診断されたとしても、高HDLコレステロール血症自体に問題があるわけではありません。
実際、日本人の1,0000人に1人は高HDLコレステロール血症と診断されています。問題となるのは高HDLコレステロール血症であることではなく、その原因が何かということです。
CETP欠損症
もう一つの原因には、CETP欠損症があります。
CETPとは、「コレステロールエステル転送たんぱく」と言われる酵素の一種で、HDLコレステロールが回収したコレステロールを、移し替える運搬役を担っています。ところがCETP欠損症の場合、元々このCETPが欠損しているため、うまく役割を担うことができません。
そのため、動脈硬化リスクが高まることから、狭心症や心筋梗塞などのリスクがうまれます。
ただ、CETP欠損症は遺伝性のものであることから、根本的な治癒方法や予防策はまだ存在しません。
日常生活の中でコレステロールを調整することや、投薬しながらうまくつきあっていく必要があります。
肝機能低下
CETP欠損症の高値となる場合、考えられるのが肝機能の低下です。
コレステロールの7~8割は肝臓で作られているからです。そのため、高い場合に限らず引く場合にも肝機能の低下が疑われます。
HDLコレステロールが高く肝機能の低下の原因とされるのが原発性胆汁性肝硬変です。
原発性胆汁性肝硬変になると、肝臓の胆管が破壊されることで胆汁の流れが悪化してHDLコレステロールが回収したコレステロールを胆汁に排出できなくなることでHDLコレステロール値が上昇します。
自覚症状には、かゆみや疲労感、口の渇き、黄疸等があります。
HDLコレステロールが低い場合に考えられること
HDLコレステロールが低い場合に考えられる疾病や健康への被害はあるのでしょうか?
その原因についてみてみましょう。
低HDLコレステロール血症
HDLコレステロールが低い状態を、低HDLコレステロール血症と呼びます。
低HDLコレステロール血症とは「LDEコレステロール値が高い」、「血中中性脂肪(トリグリセリド)が高い」あるいは「脂質異常性」のいずれかが原因となって起こります。
低HDLコレステロール血症が疑われるのは40㎎/dL未満。
低HDLコレステロール血症の場合、脳動脈硬化症、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、糖尿病などのリスクが高まります。
さらに、20㎎/dl未満と基準値を大きく下回っている場合には、生活習慣以外で以下のような原因があることと考えられます。
レンチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症
「LCAT(レンチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)欠損症」とは、LCATを作り出す遺伝子がもともと欠損していることで必要なタンパクを体内に作りだすことができず、それによって余分なコレステロールが腎臓や目に蓄積して血液中のHDLコレステロールが減少する病気です。
腎機能障害をはじめ、動機や息切れ、黄疸などの障害を引き起こします。
腎機能疾患
重度の腎機能低下、あるいは腎機能疾患である場合も低HDLコレステロール血症となります。
脂質異常症を発症すると、動脈硬化が進行して腎機能低下、さらには腎障害を引き起こします。また、その反対に慢性腎臓病は脂質異常症を発症することもあることからも相互関係にあり、非常に密接な関係にあることが分かります。
HDLコレステロール値に悩まされない!日頃からコレステロール値正常化を目指して
コレステロール値が高い、あるいは低いとその数値に一喜一憂してしまいがちですが、HDLコレステロール値は高くても低くても何かしらの疾病が隠れている危険性があります。
しかし、早めに異常に気づくことで、治療や投薬をしなくても日頃の生活習慣を改善することで十分数値を正常化させることが可能です。
肝心なのはいつ気づくか、そして正常値を継続できるか。日々の積み重ねで健康を守っていきましょう!
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参考
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