健康診断を受けて異常値を指摘された、あるいは治療が必要と言われたら「大きな病気なのかな」「治るのかな」と不安になってしまうのも無理はありません。
治療は必要なくとも、生活習慣の改善が必要と言われるかもしれません。
今回は数ある検査項目の中でも比較的馴染みのある「LDLコレステロール」の異常値が指摘された場合の対処法、正常値に戻すために日頃から意識すべきことについてご紹介します。
この記事のもくじ
LDLコレステロールを下げるためにできること
LDLコレステロール値が高いから下げたい。そのためにはまず日常生活を振り返ることが必要です。
それもそのはず、私たちの体は基本的に「食べる」・「寝る」・「動く」この3つから成り立っています。そのため、数値が異常値を示している場合にはこれらの生活習慣が原因となる可能性が高いのです。
もちろん、元々の体質や疾患が原因である可能性もありますが、まずすべきは生活習慣の見直し、そして必要に応じた改善ということができるでしょう。
では、LDLコレステロール値を下げるためにできることを見てみましょう。
食生活の改善
戦後食の欧米化が進み、魚や米を基本とする「伝統的日本食」は衰退傾向にあります。
しかし、実はこの「伝統的日本食」こそがLDLコレステロールの上昇を防ぐ食事であることが明らかになっています。
伝統的日本食とは
- 精米する前の穀類
- 野菜を中心
- タンパク質は魚が基本
の食事を指します。
この食事はエネルギー量を低く抑えやすく、かつ脂質が控えめ、食物繊維やビタミンを摂りやすい食事であることから、LDLコレステロールを激増させることもありません。
LDLコレステロールが高値で下げる必要がある場合、摂取を制限すべき食材には肉類をはじめ糖質、卵類(鶏卵・魚卵)、レバーなどの内臓などがあります。
高コレステロール値の方はこういった食材には十分注意する必要があります。
自炊が良い、この食材は注意が必要などと言っても、忙しい毎日を送る中で外食や手軽なコンビニ食を口にすることは避けられないこともあるでしょう。徹底しすぎてストレスに感じては意味がありません。なるべく自炊を心がけること、あるいは外食をする際にも日本食を意識していくことが求められます。
さらにコレステロールの合成や吸収は肝臓で行われます。しかし、加齢や喫煙、飲酒など生活習慣の乱れにより肝臓の機能が低下すると、暴飲暴食の対処ができなくなります。そのため、「腹八分目」を心がけることも重要となります。
適度な運動を取り入れる
LDLコレステロールが増えると、血液の循環が悪くなるリスクが高まります。食生活の改善に加えて取り入れるべきなのが適度な運動です。
適度な運動には、コレステロール値を下げる効果があるのに加えストレス発散効果も期待でき一石二鳥です。
というのも、LDLコレステロールは中性脂肪の増加に比例して増加する傾向にあります。
太っている人はコレステロール値が高いというのはあながち間違いではありません。
ココがおすすめ
LDLコレステロール値を下げるためにおすすめなのが「有酸素運動」です。
有酸素運動とは、酸素を取り込みながら運動を行うもので、20分以上続けることで体内に蓄積した脂肪を燃焼させることができます。つまり、短距離を思い切り走るのではなく、長い時間をかけて体を動かすことが必要ということになります。
有酸素運動の代表格と言われるのが「ウォーキング」です。ウォーキングといっても単に歩くのではなく以下を意識しましょう。
- 胸を張った姿勢
- お腹に力を入れる
- 腕を大きく振る
- なるべく大股で歩く
- 視線を先に向ける
こうすることで、通常のウォーキングよりも脂肪燃焼効果を得ることができます。
ウォーキングであれば、ウォーキングの時間を別に設けなくても通学・通勤時に数駅前で降りて歩く、エレベーターやエスカレーターを使わず階段を使うなど少しの工夫で無理なく日常生活に取り入れることができます。
質の良い睡眠を意識する
LDLコレステロールの増減には、睡眠も大きく関係しています。
それには、睡眠の脂肪燃焼効果が関係しています。睡眠不足は、食欲を促すホルモンが多く分泌され、反対に食欲を押さえるホルモンを減らしてしまいます。
さらに、脂肪を燃焼させるためには成長ホルモンが必要不可欠で、この成長ホルモン分泌には質の高い睡眠が重要となります。
脂肪をうまく燃焼させることができず、中性脂肪が高くなるとLDLコレステロールも比例して増えてしまいます。そのため、いかに質の高い睡眠をとり、脂肪を燃焼させるかがポイントとなるのです。
LDLコレステロールと睡眠不足が深く関係することはある研究により明らかになっており、睡眠時間が短い人ほど、血液中の脂質が高くなる「脂質異常症」になりやすくなります。
さらに、睡眠不足のより血管の損傷も引き起こしやすくなります。通常睡眠している間に体や血管の修繕が行われますが、睡眠時間が短いと、十分な修復が行われず、結果として弾力性が失われて血管自体がもろくなってしまいます。
血液が傷むと、血栓ができやすくなり動脈硬化の進行も引きおこすのです。
このように睡眠とLDLコレステロールには深い関係があるのですが、単に睡眠時間を確保すればよいわけではありません。
睡眠には質が重要で、それには就寝前の行動も関係しています。
- 眠る2時間前には食事を済ませる
- 就寝前のスマホやパソコンの光(ブルーライト)を避ける
- 室温・湿度を管理する
- 就寝前の入浴は避ける
など、意識しましょう。
さらに、日本人は睡眠時間が少ないことで有名ですが少なくとも1日7時間、出来れば夜10時~夜中2時までのゴールデンタイムでの睡眠ができると良いでしょう。
LDLコレステロールを上げる危険性のあるNG習慣
日頃意識せずに行っている習慣の中には、LDLコレステロールを上げる危険性のあるNG習慣も数多くあります。
もしくは、本当は体に悪いと分かっていてもなかなかやめられない習慣がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、LDLコレステロールを上げる危険性のあるNG習慣にはどういったものがあるのでしょうか?あなたにも思い当たる習慣、ありませんか?
喫煙
タバコを吸うと、血液の循環が悪くなるというのは有名な話ですが、これはタバコに含まれているニコチンがLDLコレステロールを増やし、反対にHDLコレステロールを減らす作用によるものです。
さらには動脈硬化の原因となる中性脂肪の育成を促進させる効果もあるため血液にとってはまさに百害あって一利なしなのです。
これだけでなく、タバコを吸うことで体内にニコチンやタールなどの有害物質が入ると体本来の「防御作用」として活性酵素が大量に発生します。この発生酵素はLDLコレステロールを酸化させ、血液を損傷させてしまいます。
単にLDLコレステロールを増やすだけでなく、動脈硬化をはじめ脳梗塞やくも膜下出血、発がんリスクを負うことから、タバコは健康にとって最大の敵とも言えます。
飲酒
飲酒はタバコとは異なり適量であれば体にとって有害ではありません。むしろ、適量の飲酒はLDLコレステロールを減らしHDLコレステロールを増やす効果があることが分かっています。
適量の目安としては
- ビール…大瓶1本
- 日本酒…1~2合
- ワイン…グラス2杯
- ウイスキー…シングル2杯
ただし、適量でも毎日飲むことで肝臓を弱らせてしまうので休肝日は必要です。週2回を目途に肝臓を休ませてあげましょう。
適量であればLDLコレステロール数値にも嬉しい効果をもたらす飲酒ですが、過剰摂取は肝機能の低下や肝炎を引き起こします。
また、忘れてはいけないのがアルコールは高カロリーであることです。また種類によってはLDLコレステロールを増やす原因である糖質が多く含まれている場合もあります。
飲みすぎは摂取カロリーを増やし、高コレステロールに繋がることも…。
「アルコールはLDLコレステロールを下げる」ことだけを重視していると、思わぬ落とし穴に落ちることもあるのです。
適量に抑えると同時に、アルコールと食事のカロリーを総合的に考える必要があると言えるでしょう。
ストレスの解消
ストレス社会に生きる私たちは、日々さまざまなストレスを感じています。
このストレスは、慢性的に続くことで血圧や血糖値が上昇します。同時にストレスに対応するために副腎質ホルモンが分泌されます。副腎質ホルモンの原料であるLDLコレステロールも血液中に増加してしまいます。
とはいえ、仕事や人間関係などいたるところにストレスを感じる要素があって、ストレスを全く感じない生活を送ることは困難です。必要となるのはストレスを溜めない工夫。解消法です。
スポーツに打ち込む、自分の好きなことをする時間をつくる、あるいは人に打ち明けることで解消できる人もいるでしょう。
ストレスの発散方法は人によって異なります。だからこそ、自分のストレス発散法は何か。これを身に着けておくことが重要となります。
数値を下げるために知っておくべきLDLコレステロールの役割
「コレステロール=体に悪い」そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
確かにコレステロールというと、肥満や脂肪などのワードが連想されがちで、LDLコレステロール自体が悪いものだと思ってしまうのも無理はありません。
しかし、その悪いイメージだけで決めつけてLDLコレステロールが実際に何をしているのか、果たして本当に「悪い」のかまで考えたことはあるでしょうか。
では、LDLコレステロールとは何か?についてみてみましょう。
コレステロールとは何か
コレステロールとは、私たちの体内に存在している脂肪分の一種です。
脂肪と聞くと、体にとって害だと思われがちですが、脂肪自体は本来私たちが健康に生きるためになくてはならない存在であり、コレステロールも同様です。
コレステロールは全身の細胞の膜を形成したり、性ホルモン、副腎質ホルモン、胆汁酸などを作る原料となります。さらには、ビタミン類などを代謝する働きも担っています。
そのため、なくてはならない存在なのですが、コレステロール=有害というイメージされやすいことには理由があります。
それは、コレステロールの量が何らかの原因によって激増すると動脈硬化の原因となるからです。
動脈硬化とは文字通り血管が硬くなる状態を指します。
血管が通常通り機能されなくなると、心筋症や心筋梗塞といった心臓の病気をはじめ、脳梗塞などさまざまな疾病を引き起こします。
こういった大きな原因の原因となることで、コレステロールは有害と思われているのです。
コレステロールには種類がある
「善玉コレステロール」「悪玉コレステロール」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これはこの名の通り、コレステロールの種類です。
コレステロールには善玉コレステロールと呼ばれる「HDLコレステロール」と悪玉コレステロールと呼ばれる「LDLコレステロール」の2種類あります。
この2つは同じコレステロールでありながら、異なる役割を担っています。
コレステロールを摂取し、血液中に流れこむとタンパク質と結合してリポタンパク質という物質になります。
ここで活躍するのがコレステロール。LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ役割、HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収します。
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全く違った役割であることから、HDLコレステロール・LDLコレステロールどちらもなくてはならない存在なのです。
なぜLDLコレステロールは悪玉と呼ばれるの?
なぜLDLコレステロールが悪玉コレステロールと呼ばれる理由、それは増えすぎると体にとって有害となるからです。
先にも記載したように、コレステロールは増加すると動脈硬化を引き起こします。この大元となるのが「LDLコレステロール」なのです。
LDLコレステロール値の基準値は?
LDLコレステロールの数値は、ml/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)という単位で表わされます。
単位(mg/DL)
要注意 | 基準値 | 軽度注意 | 注意 | 要注意 |
---|---|---|---|---|
59以下 | 60〜120未満 | 120〜140未満 | 140〜180未満 | 180以上 |
男性と女性とでは基準値に多少の違いがあります。
閉経後の女性は注意が必要
特に閉経後の女性は閉経による女性ホルモンであるエステロゲンの変化に伴い基準値が変動します。
基準値は
- 45~64歳:73~183㎎/dl
- 65~80歳:84~190㎎/dl
です。
閉経することで卵巣機能が低下し、LDLコレステロールが増加しやすいので、閉経を機に異常値を指摘される方も少なくありません。
これには、これまでエステロゲンが過不足なく円滑に働くために働いていた背景があり、エステロゲンの分泌が減少することで行き場のないLDLコレステロールが血液中に増加していてしまうからです。
そのため、閉経を機に何かしらの改善が必要となる人は非常に多く、むしろ閉経したらLDLコレステロール値は上昇すると思っていた方が良いとも言われています。
肥満= LDLコレステロール値が高い?
肥満とLDLコレステロールには密接な関係があります。
というのも、先にも記載したように、LDLコレステロールは中性脂肪が高いと比例して増加する傾向があるからです。
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しかし、見た目が太っているようには見えなくてもコレステロール値が高い人や中性脂肪が高い「隠れ肥満」タイプの人もいます。
特に、お腹周りに脂肪が蓄積する「リンゴ型体型」の人は要注意。「自分は太っていないから大丈夫」と油断することで、LDLコレステロール値が高く改善が必要な状態に気づくことができず、気づいたときには悪化している…といった危険性が高いのです。
そのため、体格だけで判断することなく、きちんと検査で数値を明らかにすることが重要となります。
簡単に肥満度をチェックするには、BMI値がおすすめです。
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LDLコレステロールが低いことで起こる問題
基本的にはLDLコレステロールが低くても問題はありません。コレステロール値で重要なのはLDLコレステロールとHDLコレステロールのバランスだからです。
しかし、LDLコレステロールが著しく低い場合にはホルモンが十分に作られない、免疫力低下やがん発生質が高まるなどのリスクが高まることから、生活習慣の見直し、特に食生活の改善が必要となります。
さらに、LDLコレステロールが低い場合、「甲状腺機能亢進症」や「肝硬変」、「肝炎」などの病気のサインである可能性も考えられます。
高LDLコレステロール値を気にする方が多い中で、やはりLDLコレステロールが低いことにもリスクはあり、出来るだけ正常値を維持することを意識しましょう。
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コレステロール値は私たちに馴染みの深い値であると同時にイメージだけが先行しがちです。
しかし、LDLコレステロールも体にとっては必要不可欠な物質であり、HDLコレステロール値相対的に考える必要があります。
健康のために「LDLコレステロールを下げたい!」そう思うのであれば、まずはご紹介した生活習慣の見直しからはじめましょう。私は大丈夫。その油断が、大きなあなたの健康を多く損ねる原因となるかもしれまえせん。
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